任意後見の問題点

なぜ普及しないのか

他の項目でも書きましたが、任意後見は後見全体の2%ほどです。いい制度だと思うのですが、なかなか広まりません。
理由は、なんとなくわかります。一般の方に任意後見のセミナーをしていて、法律的な話になると、皆さん、ウトウトしだします。私の話し方の問題もあると思いますが、一応理解しておいていただく必要があるので、法律的部分の話もしないといけないんです。

実際に契約する場合には、理解してもらわないといけないので、何回も説明することになります。そうすると、だんだん、契約しようと思っていた方も、挫けてしまって、先送りから、自然消滅となります。
こちらも、時間がとられますので、司法書士の報酬も高くなるという悪循環が生じます。

ここを乗り越えられる方でないと、契約に至らないと思います。

持続性の問題

せっかく、任意後見契約を締結しても、後見人の候補者が、亡くなったりして、任意後見人を引き受けられない状態になると、その契約は意味のないものになります。
現状、予備的な候補者を立てておくことが難しいので、もう一つ別に契約書(別の候補者)を作成したりすることもあるようですが、このやり方は、公証人によってはできない場合があるようです。
ここが、任意後見の大きな欠点だと思います。

また、後見人候補者を甥や姪に頼んでいた場合、契約当時は独身で受任可能だったのですが、任意後見を発効する時点では、結婚して子供がいたり、仕事が忙しくて、受任を拒否する場合があります。

取消権の問題

法定後見の場合、取消権がありますが、任意後見にはありません。

被後見人が、使用しない高価なものを購入した場合、成年後見人は取消権を行使できますが、任意後見人はそうはいきません。

なので、あらかじめ、代理権目録にクーリングオフなどの権限を書いておきます。

・訪問販売法、特定商取引法等によるクーリングオフの権限付与

・民法120条2項(瑕疵ある意思表示の取消権)による取消権の付与

・消費者契約法による取消権の付与

重要事項について不実告知に基づく誤認による取消し

不確実な事項についての断定的判断の提供に基づく誤認による取消し

不利益事実の不告知に基づく誤認による取消し

不退去または退去妨害により困惑させた場合の取消し

親族の反対

レアケースだと思いますが、私の経験として、親族が反対して、中止したということがありました。

契約日の朝になって、突然、依頼者から契約を中止したいという電話が来ました。朝から、公証役場に連絡したりと、けっこう大変でした。

1年半後くらいに、再度依頼を受けたのですが、また当日の朝、ドタキャン。

数年後に相続の手続きを奥さんから受けて、その時話を聞いたのですが、

お子さんのいない夫婦だったのですが、甥から、反対を受けたとのことです。

夫の甥が、第三者に財産を管理させることに反対していて、奥さんの話だと、相続財産を期待していたようです。遺言ですべて、奥さんに相続されたので、甥の取り分は亡くなったのですが。

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遺産整理(承継)業務 最近、遺産整理(承継)業務を頼まれることが多くなりました。遺産整理業務とは、不動産や銀行などの相続手続き全般を引き受ける仕事になります。 主に、お子さんのいない方の相続で、相続人が、甥や姪にあたる方が多いです。...
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